午後、犬の父母丸(ふぼまる)と近くの公園を散歩しながら歩いた。
久しぶりに空を見た気がする。
父が亡くなり、四十九日も過ぎたからだろうか、気持ちにゆとりができたからかもしれない。
夕暮れがせまる空が青く澄んでいた。
大きく深呼吸をしてみた。
空に飛行機雲がいく筋か見え、交差している。
昨年の春、ここで父と桜を見た。その時は桜に気を取られて、空はあまり気に留めなかった。
今年の桜は、父を病院へ送る車の中から見ただけだった。
今生で父と一緒に見る、最後の桜になるかも,
その時ふと思った。
老いた父にとって、毎年繰り返す春の季節は向こうからやってくるわけではないのだ。
そして、来年の桜は父との思い出とともに見ることになった。
目の前の父母丸もやがては旅立つ。そして自分も。
犬は死んだら、虹の橋を渡るらしい。
やはり、犬も空に向かって跳躍するんだな。
人間の場合、千の風になって大空を吹き渡るのだろうか。
いずれにしても舞台は空なんだ。
死んだ後の空はやがて、「そら」ではなくなり、「くう」になるかもしれないな、などと想像してみた。
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